離職率が高止まりすると、採用コストや教育に投じた時間が回収できないまま人材が流出します。原因は待遇だけでなく、人間関係や評価への納得感など複数が絡み合うのが実情です。本記事では、離職率を下げる施策を「原因の把握」「具体策」「進め方」「効果測定」の順に整理します。自社の状況に合わせて優先順位をつけるための判断材料としてお役立てください。
1. 離職率を下げる施策とは?取り組みの全体像

離職率を下げる施策は、単発の待遇改善ではなく、現状把握から効果測定までを一連の流れで設計する取り組みです。まず自社の数値と課題を正確につかみ、原因に合った打ち手を選ぶことが出発点になります。この章では、計算方法・検討前の前提・両立させたい視点の3点を整理します。
1.1 離職率の計算方法と数値の見方
離職率の算定方法は目的によって異なります。厚生労働省『雇用動向調査』では、『年間の離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100』で算出しています。分母をいつ時点の在籍者にするか、対象期間を1年とするかで数値が変わるため、自社内で計算ルールを固定してから比較する必要があります。
厚生労働省『令和7年 雇用動向調査』では、2025年の離職率は13.7%となっています。新規学卒者では就職後3年以内の離職が3割を超える傾向も示されており、自社の数値を評価する目安になります。
下表は計算と数値の見方を整理したものです。
| 項目 | 内容 | 見るときの注意 |
|---|---|---|
| 基本式 | 離職者数 ÷ 在籍者数 × 100 | 期間と分母の定義を固定する |
| 全体の目安 | 令和5年で約15%(雇用動向調査) | 業種・規模で差が大きい |
| 新卒の目安 | 3年以内で3割超の傾向 | 採用時期ごとに追う |
数値そのものより、自社が業界水準と比べて高いか、どの層で離職が偏っているかを見る視点が欠かせません。単年の増減で一喜一憂せず、複数年の推移で判断することが施策の土台になります。
1.2 施策の検討前に整理したい自社の前提
施策を選ぶ前に、自社の離職が「どの層で」「いつ」「なぜ」起きているかを整理することが先決です。全体の離職率だけを見て打ち手を決めると、原因と施策がかみ合わず、効果が出ないまま費用だけがかさむ結果になりがちです。
たとえば入社1年以内の早期離職が多い場合と、中堅層の流出が続く場合とでは、必要な対策がまったく異なります。前者はオンボーディングや配属のミスマッチ、後者は評価やキャリアの停滞が背景にあるケースが多いのです。
まず退職理由のヒアリングや在籍者への聞き取りで仮説を持ち、そのうえで施策を検討する順序を守ることが、遠回りに見えて最短の進め方になります。
1.3 働きやすさと働きがいを両立させる視点
離職率を下げるには、働きやすさ(環境)と働きがい(達成感・成長実感)の両面を同時に整えることが鍵になります。労働時間や休日といった環境面だけを改善しても、仕事への手応えが乏しければ、優秀な人材ほど別の機会を求めて離れていきます。
両立のために意識したい観点を整理します。
- 働きやすさ:労働時間、休暇、勤務場所の柔軟性
- 働きがい:仕事の裁量、成長機会、貢献実感
- つながり:上司・同僚との信頼関係
- 将来性:キャリアの見通しと処遇
環境と手応えのどちらが不足しているかは組織によって異なります。両面を点検し、自社で弱い側から手を打つと、限られた予算でも定着につながりやすくなります。
2. 離職率が高くなる主な原因

離職の原因は一つに絞れず、待遇・人間関係・評価への納得感が重なって生じるのが一般的です。原因を取り違えると施策が空振りするため、この章で代表的な3つの要因を押さえます。自社に当てはまるものを見極める手がかりにしてください。
2.1 待遇や労働条件と離職率のつながり
給与水準や残業時間、休日日数といった労働条件のミスマッチは、離職の入り口になりやすい要因です。特に同業他社と比べて給与が見劣りする、恒常的な長時間労働が続くといった状況は、転職を考える直接のきっかけになります。
ただし、待遇改善だけで離職が止まるとは限りません。給与を引き上げても、職場の関係性や仕事のやりがいに不満が残れば、流出は続くケースがあります。
労働条件は「ここを下回ると離職が増える」という土台の部分です。まずは残業時間や休暇取得率など、数値で把握できる条件から点検すると、改善の優先度をつけやすくなります。
2.2 人間関係やマネジメントの課題
上司との関係や職場の心理的安全性の不足は、離職理由の上位に挙がりやすい要因です。意見を言いづらい、相談しても取り合ってもらえないと感じる環境では、社員は少しずつ意欲を失い、静かに転職活動を始めることになります。
特に直属の上司との相性やマネジメントの質は、部下の定着に大きく影響します。評価や指示の仕方に一貫性がないと、部下は将来を描けず、日々の不安が積み重なっていくのです。
管理職向けの対話研修や1on1の仕組みづくりは、この領域の改善に直結します。個人の資質任せにせず、組織として支援する姿勢が問われます。
2.3 評価やキャリアへの納得感の不足
評価基準が不透明で、頑張りが処遇に反映されないと感じる状態は、離職を後押しします。加えて、成長機会の乏しさや、入社前に聞いていた話と実際の業務とのギャップも、納得感を損なう要因になります。
納得感を下げやすい典型的な要素を挙げます。
- 評価の不透明さ:基準や決定過程が見えない
- 成長機会の乏しさ:任される仕事が広がらない
- 入社前後のギャップ:聞いていた条件・役割との差
- フィードバック不足:評価の理由が伝わらない
これらは待遇のように数値化しにくいぶん、見落とされがちです。サーベイや面談で言語化を促し、本人の受け止めをつかむことが改善の起点になります。
3. 離職率を改善する施策の具体例

離職率を改善する施策は、課題の可視化から対話、働き方、評価制度まで幅広くあります。重要なのは、前章で特定した原因に合う施策を選ぶことです。この章では代表的な4つの打ち手を紹介します。自社で着手しやすいものから検討してみてください。
3.1 従業員サーベイで課題を把握する
従業員サーベイやエンゲージメント調査は、不満の要因を数値と自由記述で可視化する有効な手段です。感覚では「人間関係が原因」と思っていても、実際は評価制度への不満が上位だった、というずれを早期に発見できます。
調査は年1回だけでなく、簡易な月次のパルスサーベイを組み合わせると変化を追いやすくなります。設問は待遇・人間関係・評価・成長の4領域を軸にすると、原因の切り分けがしやすいのです。
ただし調査は実施して終わりでは意味がありません。結果を現場に共有し、改善アクションにつなげるところまでを一連の流れとして設計することが、社員の信頼を得る条件になります。
3.2 1on1やフィードバックで対話を増やす
定期的な1on1やフィードバックの仕組みは、離職の予兆を早期につかむうえで効果的です。日常業務の会話だけでは表面化しにくい不安やキャリアの悩みも、対話の場を設けることで拾い上げられます。
対話を増やす具体策を整理します。
- 定期1on1:月1〜2回、業務外の話も扱う
- フィードバック:成果と課題を具体的に伝える
- キャリア面談:半期ごとに将来の希望を聞く
- 相談窓口:上司以外に話せる経路を用意する
対話の質は管理職のスキルに左右されます。面談の型を共有し、聞く姿勢を組織全体で標準化することが、対話施策を機能させる前提になります。形だけの面談に終わらせない運用が求められます。
3.3 多様な働き方と福利厚生を整える施策
リモートワークやフレックスタイム、時短勤務など、多様な働き方の整備は定着率の向上につながります。育児や介護と仕事の両立に悩む社員にとって、柔軟な制度の有無は在籍を続けられるかどうかを左右する条件になります。
制度は導入するだけでなく、実際に使える空気があるかが問われます。制度上は時短が可能でも、周囲に気兼ねして利用できない状態では、離職の抑止にはつながりません。
福利厚生も、社員のニーズと合っているかを点検する視点が欠かせません。利用実績の低い制度を見直し、要望の多い支援に予算を振り向けると、限られた原資でも満足度を高められます。
3.4 評価制度と処遇を見直す施策
評価制度と処遇の見直しは、納得感の不足による離職に直接効く施策です。評価基準を公開し、決定のプロセスを本人に説明できる状態にするだけでも、不透明さへの不満は和らぎます。
見直しで押さえたい観点を整理します。
- 評価の透明性:基準と手順を明文化し共有する
- キャリア支援:昇進・異動・学習の道筋を示す
- 処遇改善:成果と役割に応じた報酬設計
- 運用の一貫性:評価者による差を減らす
制度を変える際は、現場の管理職が説明できる状態まで落とし込むことが欠かせません。設計と運用がかみ合って初めて、処遇改善が定着につながります。
4. 離職率を下げる取り組みの進め方
離職率を下げる取り組みは、思いつきの単発施策ではなく、段階を踏んだプロジェクトとして進めることが定着への近道です。現場を巻き込み、短期と中長期を分けて設計することで、無理なく続けられます。この章では進め方の要点を3つに分けて解説します。
4.1 施策を進める基本ステップ
離職率改善は、現状分析から検証までを順番に回すことで着実に前進します。手順を飛ばして施策の実行から入ると、原因とずれた打ち手になり、効果が測れないまま終わりがちです。
基本の流れは次の5段階です。
- 現状分析:離職率と退職理由を数値で把握する
- 課題特定:どの層のどの要因が大きいか絞る
- 施策設計:原因に合う打ち手と目標値を決める
- 実行:担当と期限を決めて現場で運用する
- 検証:数値とサーベイで効果を確認する
この5段階を一度で終わらせず、繰り返し回すことが前提です。最初の現状分析にこそ時間をかけることが、後工程の精度を左右します。
4.2 管理職を巻き込みながら進める
離職率を下げる施策は、現場の管理職の理解と協力がなければ定着しません。人事が制度を整えても、日々部下と接する管理職が意義を理解していなければ、1on1も評価面談も形だけの運用に陥ります。
管理職を巻き込むには、施策の目的と自部門のメリットを具体的に伝えることが出発点になります。離職が減れば採用や引き継ぎの負担が軽くなるという、現場の実利と結びつけると協力を得やすいのです。
あわせて、管理職の負担が過度に増えない設計も欠かせません。面談の型やツールを用意し、任せきりにしない支援体制を整えることが、継続の条件になります。
4.3 短期と中長期に分けた施策の進め方
施策は、すぐ着手できるものと時間をかけて育てるものを分けて進めると、成果を実感しながら継続できます。両者を混同すると、成果が出る前に息切れし、取り組みが立ち消えになりかねません。
時間軸で施策を整理します。
- 短期(数週間〜数か月):1on1の開始、退職理由の分析
- 短期:既存制度の周知と利用促進
- 中長期(半年〜数年):評価制度の再設計
- 中長期:管理職育成と組織文化の醸成
短期施策で小さな成功体験を積み、その勢いで中長期施策に取り組む流れが現実的です。成果の見える化が、社内の協力を持続させる支えになります。
5. 施策の効果を測定し定着させる方法
施策は実行して終わりではなく、効果を測り、振り返って改善を重ねることで定着します。数値とサーベイの両面で変化を追い、うまくいかない施策は優先順位を見直す運用が欠かせません。この章では測定と改善の考え方を整理します。
5.1 離職率や定着率の変化を継続的に確認する
施策の効果は、離職率や定着率を施策前後で比較し、継続的に追うことで見えてきます。単月の数値は季節要因や特定部署の事情で振れやすいため、四半期や年単位の推移で傾向をつかむ姿勢が求められます。
離職率という結果指標だけでなく、サーベイのスコアや1on1の実施率といった先行指標もあわせて確認すると、変化の兆しを早く捉えられます。結果が出る前に運用のずれに気づける点が利点です。
数値は経営層と現場で共有し、共通の目標として扱うことが大切です。測定を人事だけで抱え込まず、組織全体で追う体制が定着を後押しします。
5.2 施策を振り返り改善を重ねる
施策はPDCAで振り返り、効果の薄いものを見直しながら優先順位を組み替えることで精度が上がります。一度決めた施策に固執せず、データに基づいて柔軟に修正する姿勢が、限られた資源を生かす鍵になります。
振り返りで押さえたいポイントを挙げます。
- 効果の検証:数値が目標に近づいたか確認する
- 要因の分析:うまくいった/いかない理由を探る
- 優先順位の見直し:効果の高い施策に資源を寄せる
- 次の計画:改善点を次サイクルに反映する
振り返りは定例化し、担当を決めて回すことが継続の条件です。改善を積み重ねる運用そのものが、組織の対応力を高めていきます。
6. 株式会社HIKARIEの組織開発と離職率改善支援
離職率の改善は、原因の言語化から施策の実行までを継続して支える伴走が結果を左右します。ここでは、組織開発と離職率改善を専門に支援する株式会社HIKARIEの特徴を、どんな企業に向くかという視点から紹介します。
6.1 離職率や組織課題に悩む企業に向いているか
株式会社HIKARIEは、30〜300名規模で離職や組織課題に悩む経営者・人事責任者に向いた支援を提供しています。専任の組織開発チームを置きにくい規模でありながら、経営と現場のギャップが表面化しやすい企業に適しています。
離職が続くものの原因を特定できない、施策を打っても定着しないといった状況では、外部の視点を入れることで課題の輪郭がはっきりします。自社だけで抱え込まず、対話の力で言語化から着手したい企業に合う選択肢です。
社内に知見が不足していても、現状分析から一緒に進められるため、はじめて組織開発に取り組む企業でも着手しやすくなります。
6.2 株式会社HIKARIEの支援の特徴
株式会社HIKARIEの特徴は、課題の言語化から実装の伴走まで一貫して対応し、離職率の改善まで責任を持って支える点にあります。研修を提供して終わりにせず、成果が出るまで継続して関わる姿勢が軸になっています。
主な特徴を整理します。
- 一貫対応:言語化から施策の実装まで伴走する
- 継続支援:離職率の改善まで責任を持って関わる
- 全国対応:オンラインで地域を問わず支援する
- 実績:製造業で離職率を25%から8%へ改善
年間403件(令和7年)の面談実績に基づく対話力と、証券会社での経営企画経験を生かした設計力が、支援を支えています。研修の実施ではなく、離職率という結果まで伴走する点が、他の支援との違いになります。
6.3 導入を検討する際に確認したいこと
導入を検討する際は、支援の範囲と進め方を事前に整理しておくと、相談がスムーズに進みます。自社が「何に一番困っているのか」を言語化しておくだけで、初回の対話で論点を絞りやすくなります。
たとえば、離職の傾向を示す数値や、これまで試した施策とその結果を手元にまとめておくと、現状分析の精度が上がります。加えて、社内で施策を推進できる担当者を想定しておくことも欠かせません。
支援は伴走型で進むため、自社側の関わり方や意思決定の体制を確認しておくことが、成果を得るうえで役立ちます。まずは課題を整理し、相談の場で方向性をすり合わせる進め方が現実的です。
7. 離職率を下げる施策に関するよくある質問
離職率を下げる施策について、着手のしかたや効果が出るまでの期間、企業規模による違いなど、よく寄せられる疑問に答えます。本文で解説した要点を、実際の判断に役立つ角度から整理しました。
7.1 離職率を下げる施策はどこから始めるべきですか?
結論として、まず自社の現状把握から始めるのが確実です。全体の離職率だけでなく、どの層でいつ離職が起きているかを数値と退職理由で整理すると、打つべき施策が絞れます。
いきなり待遇改善や制度変更に着手すると、原因とずれて効果が出にくくなります。サーベイや面談で不満の要因を可視化し、そのうえで1on1など着手しやすい施策から始める流れが現実的です。原因の特定を飛ばさないことが、遠回りを避ける近道になります。
7.2 取り組みの効果が出るまでどのくらいかかりますか?
効果が出るまでの期間は施策の種類によって幅があり、一律には言えません。1on1や制度周知など短期施策は数か月で変化の兆しが見える一方、評価制度の再設計や文化の醸成は半年から数年単位で捉える必要があります。
離職率は単月で振れやすいため、四半期や年単位の推移で判断するのが妥当です。サーベイのスコアや面談の実施率といった先行指標を並行して追うと、結果が出る前に手応えを確認できます。焦らず継続する姿勢が求められます。
7.3 中小企業でも取り組める離職率の施策はありますか?
中小企業でも、費用をかけずに始められる施策は複数あります。専任チームや大きな予算がなくても、対話や既存制度の活用から着手できます。
- 退職理由の分析:既存データの振り返りから始める
- 1on1の開始:管理職と部下の定期面談を設ける
- 既存制度の周知:使われていない福利厚生を見直す
- 簡易サーベイ:短い設問で不満の要因を把握する
まずは小さく始め、効果を見ながら広げる進め方が向いています。小規模だからこそ、経営者と現場の距離が近く、施策の浸透が早い利点も生かせます。
8. まとめ:離職率を下げる施策で働きやすい組織をつくろう
離職率を下げる施策は、現状把握から原因の特定、具体策の実行、効果測定までを一連の流れで進めることが成果につながります。待遇だけでなく、人間関係や評価への納得感、働きがいまで含めて点検する視点が欠かせません。
まずは自社の離職がどの層で起きているかを数値で確認し、着手しやすい対話施策から始めてみてください。短期の成功体験を積みながら、評価制度や組織文化といった中長期の課題に取り組む流れが現実的です。
自社だけで原因の言語化や施策の定着が難しいと感じる場合は、外部の伴走支援を活用する選択肢もあります。働きやすさと働きがいの両面を整え、人材が定着する組織づくりを一歩ずつ進めていきましょう。
離職率を下げる施策の設計から定着まで伴走する株式会社HIKARIE
株式会社HIKARIEは、課題の言語化から施策の実装まで一貫して伴走し、離職率の改善まで責任を持って支える組織支援会社です。製造業で離職率を25%から8%へ改善した実績を土台に、まずは自社の状況を整理して相談するところから始められます。
離職率を下げる施策に外部の視点を取り入れたい経営者や人事責任者の方は、下記から支援内容をご確認ください。